レンタルな関係。
 
 三日前。

 
 免許を取った報告と一緒に、


『夏休みにみんなで行った旅館、予約したからっ!』


 突然かかってきた電話の向こうでいきり立つ声。

 何のことかと黙って聞いてれば、一人でぺらぺら何分もしゃべりやがって。


 そのうち鼻水らしきものをすすり出した様子に、思わずしっかり耳を傾けると。

 どうやら、話は要とのことに切り替わっていたらしく。


 お互いに納得して終わりの答えを出したようだ。


 初めての彼氏だったんだと。

 幸せだったんだと。

 
 俺に聞かせるというよりは、回想に浸っているというようなコイツの言葉に、俺はただ黙って耳を傾けていた。


 聞かされてるほうの立場としては、あまり面白くないもんだが。

 
 まあ仕方ない。

 オンナってーのはそういうもんだ。

 聞いてやれば、幾分かすっきりするんだろう。

 話しているときには既に答えが出ているもので。

 それを言葉にして誰かに伝えることで、ようやく現実になるんだろう。


 震えながら、途切れ途切れに吐き出されるコイツの言葉に、

 部屋でひとりで、カエルを抱えながら泣いてる姿が思い浮かんじまって。

 胸の内が、少しばかり痛んだ。

 
 …泣くんじゃねーよ、バカ。



 まあでも、話せたことでほっとしたんだろう。

 要との関係にも、悪い跡は残さずに、自分でケリをつけることが出来たことに対しても。

 
 電話を切るときのいつもの明るい声に、

 こっちの方が、安堵した。



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