レンタルな関係。
思えば三ヶ月前。
運よくレンタルできた要の部屋で、
コイツと顔を合わせた初日。
あの時の衝撃はたぶん、この先絶対忘れることはないだろう。
要からは、彼女がいるということは聞いていた。
しかも自分の部屋にほぼ常駐してる彼女だと。
まあそれでも、俺に部屋を貸すからにはその辺の事情はしっかり伝えてあるんだろうと安心しきっていたのだが。
あの時のコイツの、すさまじい拒否反応。
はっきり言うが、俺のほうが数倍、焦っていた。
焦っていた…ともまた違うか。
とにかく驚きを隠すことが最優先だった。
とっさの自分の芝居に、今振り返っても我ながら感心してしまう。
「キスでもしとく?」
…よく言えたものだ。
風呂から上がると、玄関先に立ち尽くしているコイツがいて。
何の冗談かと一瞬本気で身構えた。
まさか他の男のいる部屋に戻ってくるとは。
いや、
問題はそこじゃなかった。
「彼女」と聞いていたのが、まさかコイツだったとは。
衝撃の原因は、ただ、そこだった。
コイツにとって俺は、初見の男であったのは確かだろう。
あのザマだ。
いきなりぶっ倒れやがって。
ふらりと倒れ行く、ちっちぇカラダを支えながら、
ベッドに運んで寝かせながら、
着替えるのも忘れてその顔をマジマジと眺めてしまった。
…冗談だろ。
俺にとって、コイツのこじんまりしたその顔は、
よく見かけていた… いや、見ていた、
気になるオンナの顔であることに違いなかったからだ。