レンタルな関係。
 
 偶然知った、コイツの誕生日。

 真っ先に浮かんだのは、あの店のピアスだった。


 いきなり現れた男が誕生日に贈り物をするなんて気持ちわりぃだろ。

 爆睡するコイツの寝顔を見ながら、そう思っては見たものの。

 俺の足はあの店に向かっていた。


 ピンクのピアスを包んでもらいながら、

 これを受け取ったときのコイツの表情はどんなだろう、なんて考えてる自分に自嘲し。

 なにを血迷ったか、ケーキなんても買っちまって。

 気づけば両手に、誕生日仕様の大荷物。


 バカか俺は。


 苦笑いしながら戻った部屋で、何故かソファに移動して眠り込むコイツに毛布をかけてやりながら、

 緩んでしまう自分の顔を何度も撫で付けた。
 


 子どもみてぇな顔でケーキを頬張るコイツの姿は、

 顔とカラダ同様、本当に幼く。


 クリームまでくっつけやがって。

 どこまで単純なんだ、目の前のオンナは。

 思わずクリームのついたその頬に手が伸びた。


 ピアスを受け取ったときのコイツの反応は想像以上のもので。


「なんで私が、これを欲しがってるって、わかったの?!」


 …教えねぇぞ、絶対。



 ゲップはするわ、全部吐いちまうわ。

 ホントに手がかかる。

 そのくせ俺のことをからかいやがって。

 ピアスをその耳につけてやりながら、このままキスしちまおうかとも思ったが、
 
 コイツの赤すぎる顔に、寸でのところで理性が働いた。






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