レンタルな関係。
「ちょっと唯衣、あんた、髪ボサボサだよ?」
バイト先のファミレス。
ロッカー室で声をかけてきたのは、同級生の早坂麻紀(はやさかまき)。
高校時代からの親友で。
希望の大学も同じところだった私たちは、運良く二人とも一発合格できたのだ。
このファミレスでバイトを始めたのは麻紀のほうが先で。
ちょうど欠員が出たところで紹介してもらった。
大学も同じだし、バイトも二人同時にシフトが入っていることが多いので、要くんよりも一緒にいる時間は多いかもしれない。
「ちゃんと乾かさないで来たんでしょ、髪。早くセットしな」
「う、うん」
「まさか朝から彼氏とえっちなことしてきたんじゃないでしょうね?」
いやらしく笑った麻紀は、必死で髪をとかす私の顔を覗き込んだ。
大きくて丸い目が、くるくるしてる。
「ち、違うよ。ちょっと…ひと悶着あって」
「ひと悶着? なに?」
「あとで話すからっ。とにかく今はセットさせてっ」
私は何とか髪を整えて、制服に着替えた。
その時点ですでに10時10分前。
先にお店に出て準備をしていた麻紀の隣りに立つと、自然にため息が漏れた。
「で、なに? 何かあったわけ?」
ショートヘアの髪を軽くかきあげて、麻紀はちょっと心配そうな顔。
すらりと伸びた腕。細くて長い足。
身長167センチの麻紀は、顔も綺麗だし、はっきり言って、モデルみたいだ。
へたな雑誌モデルより、何倍もかっこいい。
わ、私だって、平均よりちょっとはカワイイかも。とか思っちゃってるけど、麻紀には全然かなわない。
第一、私の顔も体系も幼すぎる。。
私は、キレイにとがった麻紀のアゴを少し見上げる形でつぶやいた。
「昨日の夜、部屋にね、突然変な男が現れて」
「ええっ??!!」
…まだ何にも話してないじゃん。
あんた、驚きすぎ。
お客さん、こっち見てるし。
あ、店長も。
仕事仕事っ。してるふりっ。