レンタルな関係。
私は肩をすぼめて、ぎゅっと目を閉じた。
「おい」
背後から男の声がして。
「…っ、やだっ」
腕を振りほどこうとしてチカラを入れる。
けれど掴んでいる相手の方が強くって、全然振りほどけない。
「おいってば」
「はははは、離して、くださいっ」
「びしょ濡れでなにやってんだ、お前」
「わ、私なんて襲っても、全然面白くないですからっ」
「はあ?」
「む、胸は小さいし、襲い甲斐、無いですからっ」
「なに言ってんの、お前」
「お、お願い、離して……って…え?…お前…?」
こ、この声……
もしや…
「お前の胸が小さいなんて、知ってるわ。サイズ確認したからな」
こ、こ、この、この、この……
ゆっくり振り向くと、黒いTシャツのロゴが目に入って。
そのまま顔を上げていくと、案の定……流川の顔。
「る…かわ……なお、と…」
「なにやってんの、お前」
こ、このやろぉ……
「あんた一体…何回私を驚かせれば…」
「しかし、ひでぇ格好だな。雨のなか濡れて歩いて楽しいか?」
「バカっ!!」
流川は、自分のさしていた傘を私のほうに差し出してきたけれど。
私は流川の黒いTシャツの胸を、チカラ一杯突き放した。