レンタルな関係。
そのままあやすように私の頭を撫でた流川は、片手で私を支えながら傘を拾い上げて。
「ほら、頑張って歩け」
腰に手を回して、私の歩みを促した。
私はすっかり気力が奪われていて。
流川の体温に抵抗しようとは思ってみたものの、うまくいかなった。
むしろ、冷えたカラダを支えてくれるその腕の温かさに安心してしまって。
カラダを預けてゆっくり歩き出すことができた。
「なんで雨のなか歩いてたんだよ」
「コンビニに行って、ご飯買ってたの」
「傘も持たないで出てきたのか」
「出るときは降ってなかったし」
流川は、私の歩調に合わせてゆっくり歩いている。
「あ、あんたこそ、どうしてこんなところに」
「荷物取りに来たんだよ。誰かさんに追い出されたからな」
あ、そうか。流川の荷物、残ったままだったんだ。
「しかしびっくりし過ぎだろ、お前」
「だって…この辺、最近変質者が多いから…」
「この俺を変質者に間違えたってことか」
「いきなり腕なんて掴むから。びっくりするに決まってるじゃん」
むくれて隣りの流川を見上げた。
…のはいいけれど、張り付いた前髪が目に入って、よく見えない。
そんな私を見下ろして、流川の顔に、苦笑が浮かぶ。
傘を持ったままの手がおでこに伸びてきて、真ん中から軽く分けられた。
ドキン…としたのもつかの間…
「夜に一人歩きしてる、お前が悪い」
……ああ、そうですねっ。
私が悪うございましたっ。
こういうヤツだった、隣りの、コイツは。
この流川はっ。
「良かったな、掴んだのが俺で」
はいはい、良かったですよっ。