レンタルな関係。
 
公園を過ぎ、わき道まであと5メートル。

 
携帯をぎゅっと握り締めて、私はその道に折れた。


 
全力で。

 
もう何年ぶりだろうという全速力で走った。

 
もっとも、流川の言うとおり、私の足は遅いほうで。

 
どのくらいのスピードが出ていたのかなんてわからないけれど、とにかく必死で走った。


 
息があがって。

 
耳にあてていた携帯を下ろして、腕をふる。

 
サンダルなんて履いてくるんじゃなかったよぉ……

 
足先にチカラを入れて、

 
転びそうになりながら、コンビニを目指す。


 
サンダルのヒールの音の他に、

 
後ろから…やっぱり足音が追ってきてる。

 
ジャラジャラと、キーホルダーみたいな音もして。

 
 
もうすぐ大通りに出る。

 
コンビニの灯りが見えてきた。

 
早く…早くっ! 動けっ、私の足っ!



運良く大通りの信号は青で。

 
私は横断歩道を突っ切って、コンビニのドアに手をかけた。

 
そこで初めて振り向いて。

 
ドア越しに、追いかけてきたヤツの顔を見た。



「あ……」


 
コンビニ前の駐車場の向こうで私の姿を見ていたのは…

 
夕食を買ったときにここでぶつかった男の人だった。

 
 
悔しげに顔を歪ませて立っている男の腰には、キーホルダーがいっぱいぶらさがっている。


 
私はすぐに棚の影に隠れた。

 
中まで追ってくることはないと思うけど…

 
これから、どうしたらいいんだろう…


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