レンタルな関係。
 
ふいに顔を上げたオネエマンは、鏡越しに私と目を合わせて。


ちょっと、鋭い目つき。

 
 
つかみかかってこられたらどうしよう。

 
じりじりと後ずさりし掛ける私だったけれど。



「まあ、よく見ると可愛いからいいわ」


「へ?」


「アタシより可愛くないけどね」


「は、ははは」


「幸せになりなさいよ」


 
振り向いたオネエマンの表情は、びっくりするくらい優しくなってて。

 
あれ? 綺麗です。

 
恋する、女の顔、だ。


 
つかつかと私の前にやってきて。

 
ぽん、と肩にのせられた手のひらは、やっぱり大きいけれど。

 
表情は、女の人、そのものだ。



「あ、あの、その」


「譲るわ、アンタに」


「……」


「安心しなさい、まだ食べてないから」


「……」


「アンタのことも、別に恨んだりしないから」


「……」


 
優しくて、寂しそうな顔。

 
ちょっと…ぐっときて。

 
そのまま出口に向かったオネエマンは振り向いて、



「でも、泣かせたら承知しないわよ」


 
さっきまでの表情はどこへやら。

 
結構、すごみ、効いてます。

 

「は、はいぃっ」


 
思わず返してしまった返事。

 
私の返事に、ニコッと笑ったオネエマンは戻っていった。


 
恋愛のカタチって。

 
いろいろあるみたいです。



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