秘密警察は、ヤンキー少女と天然超能力者の上でドSに微笑むの知っているか?
「で、此処に何の用なんだよ?」
はぁ、とため息をついてかぐらちゃんは頭をかかえた。
そんなかぐらちゃんに遥は凄く笑顔でこう切り返す。
「お礼参りです。」
・・・。
一瞬にして室温冷えたな。
5度くらい冷えたな。
遥はゲーセンの件を丁寧に説明した。
海坂の不良の中で、明らかに動揺して目を逸らした奴がいる。
多分、そいつが悪いんだろうけど、俺は敢えてそいつを注意しない。
俺が注意すべきは。
「かぐらちゃん、一般人に迷惑かけちゃ駄目だろ。」
「茉莉さん、別に杉島番長がかけたわけじゃ……」
「メンバーの不始末は、番長の不始末だ。上に立つのなら責任はかぐらちゃんにもないわけじゃない。」
そうだろう?とかぐらちゃんを見据えて俺は言う。
「姐さん……!」
「一生付いていきます!」
そんな声がちらほら聞こえてくる。
その中には海坂もいて。
いや、違うだろお前ら。付いていくのはかぐらちゃんだろ。
「ああ……望月の言ってることは正論だ。海坂が一般人に迷惑かけたんだな。」
「ああ。」
「お前ら。俺は、コイツに負けたから言う事を聞いてるってだけじゃねえ。コイツの言ってることに賛成してるから、コイツの下についたんだ。」
「かぐらちゃっ……!そんなこと思ってくれてたのかっ……。どんだけツンデレなんだっ。」
もう涙が出てきたよ!
何て君は可愛らしいんだよ!
「う、うるせえ!!!俺はツンデレじゃねえ!!!」
かぐらちゃんは涙が出ている俺にレースのついたハンカチを手渡した。
「とにかくだ。海坂にいるのなら、一般人に迷惑をかけることは許さねえ。」
「ここまで話聞いて、それでも聞かねえ奴は、俺とかぐらちゃんで相手してやるよ。」
ぐるりと部屋を見渡すと、海坂も西門も皆真剣な表情だった。
うん、これでもういーだろ。
「済まなかったな、望月。」
「ああ。分かってくれればい「良くない。」」
声に振り向くと、遥が不機嫌だった。
「かぐらちゃん。一通り反論してくれなきゃ困るよ。俺は、喧嘩しにきたんだから……ね?」
「ね?じゃねーよ!!!てかお前にかぐらちゃんって呼ばれる筋合いは本当にねーよ!!」
遥とかぐらちゃんは仲がいいんだか悪いんだか、いつも顔を合わせれば口喧嘩をする。
こうなると長いんだよな。
俺は適度に暇を潰そうと思って、かぐらちゃんの道具箱(別名.乙女の裁縫セット)を漁ることに決めた。
かぐらちゃんの物が鞄の置き場所はもう知ってる。
そう思って近づいて鞄をのぞき込めば、見えたのは一冊の冊子。
「おい、かぐらちゃん。これ、何だよ?」
あ?と返事をしたかぐらちゃんはみるみるうちに表情を変えた。
「〜〜〜〜っ、ちょっと来いっ!!」
袖を引っ張られ、美術室の外へと引っ張りだされる。
「“斎王學園付属高校 絶対合格マニュアル”?かぐらちゃん、西の推薦とってねーのか?」
「ああ。」
つーか人の鞄の漁んなよ、と言うかぐらちゃん。
そう、俺が見つけたのは予備校から出版されている高校の合格マニュアルだった。
ちなみに西の推薦は名前を書けば受かる、馬鹿でも取れるとの評判で、俺もゲットしたやつだ。
「かぐらちゃんは西行くと思ってたのに。さみしいな。」
何となく暗くなった雰囲気の中、ぽつりとかぐらちゃんは呟く。
受かればの話だけどよ。
「……俺、高校ではヤンキー卒業しようと思ってるんだよ。」
かぐらちゃんが俺をじっと見たまま、沈黙が続く。
なんか、答え求められてるみてーだ。
取り敢えず。
「無理じゃね?」
「無理じゃねえよ!!」
「いや、無理だろ。かぐらちゃん喧嘩っ早いもん。」
「いや、俺は眼鏡キャラの黒髪の真面目で青春してぇんだよ!」
「……うーん。俺、かぐらちゃんは超可愛いと思うよ?中身は。でも……眼鏡で隠しきれるか?」
「つまり人相悪いってんだろ!分かってるよ!」
ゼーハーと息切れしてかぐらちゃんは俺を指さす。
「見てろよ!俺は絶対受かる!!それでお前とはさよならだからな!」
「え、まじか。それ俺嫌だ。遊ぼうぜ。」
「……っしゃーねーなっ。たまにだぞ!」
「────って事があったんだ。」
俺は今、庵とコンビニの前で肉まんを食べている。