個人的事情につき“お触り”厳禁
その手はゆっくりと私の髪に触れ、中村くんは小さく指先で摘まんだ。
「髪、キレイなのに埃なんか付けてたらもったいねぇよ?」
そう言って指先で摘まんだ埃を払った中村くん。
キレイ、なんて。
前に課長に言われた単語。
だけど。
その言葉は中村くん的に深い意味がある、というよりは。
ただ見たまんま、そのまんまの感想を言っているだけみたい。
だからこそ時間をかけた手入れの努力を、認めてもらえた気がしたんだ。
「…ありがとう」
「いやい…っ!?」
突然、中村くんの顔から血の気が引く。
さらに目を見開くと、パクパクと口を開いた。
「中村くん?どうし…」
「藍川、掃除は終わったのか」
ドアに背を向けていた私の声を遮るように聞こえたのは。
振り向くのが怖い…。
不機嫌MAXな課長の声だった。