個人的事情につき“お触り”厳禁
「か、課長…?」
「掃除は終わったのかと聞いている」
「お…終わりました!!」
口調だけでも十分な威圧感を感じながら。
私は課長の言葉に答えた。
「…中村」
「は、はいっ!!」
「今朝話した企画の資料、今日中に仕上げてくれ」
「えっ、今日中ですか!?」
「…できるよな?」
「…っ、失礼しますっ!!」
早くこの場から離れるのが賢明と。
威圧感たっぷりの課長の脇をすり抜けて。
中村くんは足早に会議室から出ていった。
「…さて」
「…っ!!」
会議室に入ってくる課長の不機嫌オーラが半端ない。
中村くんがいた時と全然違う。
一歩、一歩と縮まる課長との距離に。
一歩、一歩と後退りしたくなる。
…いや、実際に後退りしていた。
「逃げるな」
「に…逃げてませんっ」
言葉で追い詰められ、体で追い詰められ。
気付いたときには、さっき自分で磨いた窓ガラスに背をつけていた。