個人的事情につき“お触り”厳禁

課長は私が背をつけているガラスと私とを挟み込むように。

トンッと顔の横に腕をつき、顔を近づけてきた。





「…なぜ逃げる?」

「か…課長が近づいてくる、から…です…」

「近寄られて困ることでもあるのか?」

「いえ、それは…」





困るんじゃなくて、怖いんです。

とりあえず、その禍々しいオーラをしまってはいただけないですか…?

(怖くて)言葉に出せない気持ちを、心の中で訴えていると。

ふいに課長が私の髪を一束、手にした。





「…勝手に触らせるな」

「え…?」

「俺の許可なく触らせるな。…まぁ、許可なんて出すつもりもねぇけどな」





そう言うと。

手にした髪に唇を落とし、その手を私の後頭部に差し込んだ。

そして。

髪を指で梳きながらため息混じりに囁いた。

…それはもう。

「好きだ」なんて言葉より、ある意味破壊的で。

腰が落ちそうになった。





「髪の毛1本だって他の野郎になんか触らせてやるかよ。
…お前はまるごと俺のもんだ」





< 5 / 7 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop