個人的事情につき“お触り”厳禁
課長は私が背をつけているガラスと私とを挟み込むように。
トンッと顔の横に腕をつき、顔を近づけてきた。
「…なぜ逃げる?」
「か…課長が近づいてくる、から…です…」
「近寄られて困ることでもあるのか?」
「いえ、それは…」
困るんじゃなくて、怖いんです。
とりあえず、その禍々しいオーラをしまってはいただけないですか…?
(怖くて)言葉に出せない気持ちを、心の中で訴えていると。
ふいに課長が私の髪を一束、手にした。
「…勝手に触らせるな」
「え…?」
「俺の許可なく触らせるな。…まぁ、許可なんて出すつもりもねぇけどな」
そう言うと。
手にした髪に唇を落とし、その手を私の後頭部に差し込んだ。
そして。
髪を指で梳きながらため息混じりに囁いた。
…それはもう。
「好きだ」なんて言葉より、ある意味破壊的で。
腰が落ちそうになった。
「髪の毛1本だって他の野郎になんか触らせてやるかよ。
…お前はまるごと俺のもんだ」