個人的事情につき“お触り”厳禁
…大人気ないですね
彼女の髪の触り心地はたまらない。
ツヤツヤで、サラサラで、柔らかくて。
いつまで撫でていても飽きない。
そんな彼女の髪に中村は俺になんの断りもなく触れた。
ふざけんな。
彼女に触れていいのは俺だけだ。
だから今週中にあげればいい仕事を、今日中にやれと言ってやった。
完全に嫌がらせだ。
「…課長」
「なんだよ」
「中村くん、髪についた埃をとってくれただけなんですよ…?」
「知るか。触ったことには変わりねぇだろ」
「…大人気ないですね」
「…うるせぇ」
チッ、と軽く舌打ちをした後。
俺は彼女からプイッ、と顔を背けた。
そして彼女にも聞こえないくらい。
小さく、小さく呟いた。
「触らせたくねぇもんは触らせたくねぇんだから仕方ねぇだろ」
そうしたら彼女は、小さく小さく囁いた。
「私が触って欲しいのは課長だけです…」
「…こんなとこで煽るな」
俺だって触りたいのはお前だけだ。
そんな口に出せない気持ちを込めて。
俺はまた彼女の髪に指を通した。
【END…?】