あなたのために。-光と影-
やっぱり環には協力させずに自分一人でやると言おうとするよりも先に、環が口を出す。
「…やっぱりあたしを危険に巻き込みたくないからやめろなんて言うなよ?」
やっぱり私の言うこと気づかれてた。
当日前は余裕なようでも、実際当日になるとやっぱりやめた方がとか考えてしまう。
自分の弱さに嫌気が差す。
環は煙草を口から出し、煙草を私に向ける。
「何回も言わせないでよね。あたしはあんたのためだったら汚れ役は幾らでもやるし、傷ついても死んでもいいとさえ思ってる。だからあんたはあたしのことなんか気にせずに目の前のことに集中しな」
環はかっこいいと思う。
潔くて女にしとくには勿体無いとさえ思う。
環のこの言葉が聞きたくて何回もやめた方がとか言ってしまうのかもしれない。
何だかこの言葉を聞くと安心する。
無事に成功しそうな気がする。
環のお陰で復讐が出来る自分がいると思う。
ありがとう、環。
口では言えないから心の中で言っとく。
口で言うとあいつは調子に乗るから言わない。
いつも付けている黒百合のピアスを付け終わると、丁度昨日と同じボーイが顔を覗かせた。
環はいつの間にか煙草を携帯灰皿にしまっていた。
「黒百合さん、お客様がお見えです」
静かに立ち上がり環の前を通り、更衣室を出る。
環は私の肩を軽く叩いた。
何も言われなくても「しっかり」と環の言いたいことが伝わってきた。
私は環だけが気付くようにふっと小さく微笑んだ。
環も気付いたのか視界で笑ったのが見えた。