あなたのために。-光と影-
もしかして今日こそ逃げれるチャンスなんじゃ……?
でも昨日とは違って、逃げるのを一瞬躊躇う。
それは奴から『愛してる』なんて言葉を聞いたせいだ。
このまま奴の隣にいても、奴は私に危害を加えようとはしないだろう。
むしろ私に尽くしてくれそうな勢い。
そして逆に逃げた方が怖い。
"怖い"という気持ちを打ち消すように、首を左右に振る。
ここにとどまっては駄目だ。
私は復讐するためにここまできたのだから。
こんなところで止まったら、今までの努力が水の泡。
悩んでる暇はない。
早くここから出ないと。
私は昨日のように荷物をまとめ、玄関にある黒いヒールの靴に足を通す。
ここで蘇るのは、ここで奴に言われた言葉。
こんな汚れた私に『愛してる』と言って、愛そうとしてくれた。
私は奴を愛することは出来ないけど、言われて嫌な気持ちにはならなかった。