あなたのために。-光と影-
部屋の外に出ると、昨日と同じ廊下が現れた。
でも昨日のような焦りはなくて、自然と下に降りる階段を見つけることができた。
エレベーターで行くのが手っ取り早いけど、幹部と遭遇したら捕まって終わる。
だから逃げられる階段を使う。
関東一の極道一家だけあり誰も乱入してくる者がいないのか、警備は手薄。
奴がいないのだからこそ、警備は強固しといた方がいいと思うけど。
表から出ると目立つため、組員の後をつけて裏口を見つける。
長い髪を簡単にまとめあげ、鞄に入れてあった帽子の中に入れる。
これで私が黒百合だとは気付かないだろう。
組員が裏口を出てドアが閉まる前に、手をドアの間に入れる。
ドアは指紋認証式になっているから、閉まったら指紋を認証させないといけない。
間一髪のところでドアを開け、外に出ることが出来た。
外に出ると夕日はもう沈んでいて、星が出始めている。
久しぶりの外だ。
辺りに組員がいないことを確認して、グッと背伸びをする。
いつも吸っていたのに、久しぶりとなると新鮮に感じる外の空気。
繁華街の空気は薄汚れているのに、軟禁されていた私にはそれすら高原の美味しい空気に感じてしまう。
でもこれで晴れて自由の身だ。
「…さて、これからどうしよう」
まずはどこに行こうか悩んでいると、一番最初に思い浮かんだのは、煙草を咥えた環の顔。
そうだ、あれから環に連絡してなかった。
鞄からスマホを取り出してスイッチを入れたが、電池が切れていてつかなかった。
奴の真似をするようにチッと舌打ちをする。