あなたのために。-光と影-
仕方ないから先にキャバクラに行こう。
キャバクラ胡蝶に行って、辞めることを言わないと。
私がいないと気付いた奴がまず探しに来るのはここだと思うから。
早くやめてしまえば、家の住所など知られないはず。
極道一家の坊っちゃんならすぐにバレるかもしれないけど、ちょっとした悪足掻きくらいしてもいいでしょ。
踵を返してキャバクラ胡蝶に向かおうと、踏み出した。
「…姐さん?」
「え?」
いつも呼ばれてるから癖で反応してしまう。
足を止めて、後ろを振り返る。
するとそこには涙目でこちらを見る二人の少女がいた。
その二人を見た瞬間、足の力が抜けその場に座り込む。
「姐さん!良かった、無事で良かった!」
二人の少女は私に駆け寄り、力の抜けた私を支えてくれた。
この二人は環の右腕的存在、篠と弥生。
私も環の族のみんなにお世話になってて、特にこの二人とは仲が良い。
私の妹のように可愛がってきた。
きっと環が私がここに軟禁されていると考えて、篠と弥生を見張らせてたんだ。
篠は族らしくない涙を見せて、私に抱きつく。
そんな篠をあやすように、金髪の篠の頭を撫でる。
「…環?姐さんが蓮条の家から出てきた。
私達がしっかり倉庫まで連れて行くから、安心して。うん、じゃあ」
環に電話していた弥生が、私の方を向いてまた目に涙を溜めた。