あなたのために。-光と影-
弥生は物静かだけど、実はすごく涙もろい。
これは私だけが知ってること。
手招きするように弥生に手を伸ばす。
「…弥生、ただいま」
弥生に微笑むと、弥生も泣きながら微笑んで私の手をとった。
「…姐さん、おか…」
ドゴッ
すごく鈍い音がした。
我に返れば、弥生が口から血を吐いて道路に倒れていた。
嘘……でしょ?
「…やっと出てきたな、黒百合さん?」
声がする方へ顔を上げると、そこには男が金属バットを持って立っていた。
もしかしてその金属バットで、弥生の頭を殴ったの?
どうして、私のことを知っているの?この男は。
「お前ぇぇぇぇぇ!」
弥生の姿を見て怒った篠が、その男に襲いかかる。
ダメ!迂闊にいっても……!
篠を止めようとしても声が出なくて、ただ手を伸ばすことしか出来なかった。
咄嗟に立ち上がって手を伸ばしたけど、篠も男に殴られその場に倒れてしまった。