あなたのために。-光と影-
どうすることも出来なかった私は、ただ倒れた篠へと駆け寄る。
「…あ゛ぁ!」
神様はそれすら許してくれず、私の鳩尾に一発拳が入る。
あまりの強い衝撃に、その場に倒れてしまう。
「お前には人質になってもらうぞ、黒百合」
さっきとは違う男の声がした。
そこから私を殴ったのは別の男だと解釈する。
頭は冷静でいられても、意識はどんどん遠のいていく。
「…や、よい……しの…」
ピクリともしない弥生と篠に手を伸ばしても、届くはずがなくて。
やっと奴の檻から逃げられて、弥生と篠に再会できたのに。
あと少しで環にも会えるはずだったのに。
私って本当についてないな。
届くはずのない手を伸ばしたまま、私は意識を失った。
意識を失う前に脳裏に浮かんだのは、環じゃなくて、何故か奴だったことの理由は分からない。