あなたのために。-光と影-




助けに来た?
そんなわけないよね。こいつは、




「…逃げた私を……殺しに来たんでしょ…
早く……殺し、て」




もうあなたでいいや。
早く私を殺してよ、楽になりたいの。




奴の手の動きが止まって、しばらく反応がなかった。




「…っ」




やがて奴の大きな手が私の首を掴む。
私の体は宙に浮き、呼吸が一気に苦しくなる。



でも抵抗はしない。
どれだけ苦しくても、これで死ねるのだから。




私の首を絞めながら奴は、切れ長な目でジッと私を見ている。




「…死ぬ前に一つ頭に思い浮かべろ。
それがお前の後悔だ」




この坊ちゃんは今さら何を言っているの?




死にたい人に向かって後悔なんて、あるわけない。
後悔があるくらいなら、死にたいなんて思わない。




こんな汚れた人生に、後悔も何も……




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