あなたのために。-光と影-




それはつまり『俺が殺すまで傍にいろ』ってこと?




いきなり端的に言うと思ったら、肝心なところはオブラートに包んで言う。




不器用すぎる、この人。




でもその不器用がなんだか温かくて、心地が良かった。




不器用な奴がおかしくて笑ったら「何笑ってんだ」という目で睨まれて、額を思いっきりぶつけられた。
すごく痛い。




こんな温かい気持ちになったのは、汚れる前以来かもしれない。




でも悪くないかな、なんて私らしくないけど、これもいいかなと思う。




一度汚れたのなら、とことん汚れてやる。




「…そんなに私を殺したいなら、あなたに殺させてあげる」




不器用な奴には不器用返し。




不器用な奴には意味が分からないかも。
『仕方ないから、傍にいてやる』って意味だって。




でも奴には言葉の意味が分かったみたいで、奴はニヤリと笑った。
不器用なくせに、不器用な言葉の意味は分かるんだ。




変な奴。




そんな変な奴の傍にいることになった私は、もっと変なのかもしれない。




私が殺すはずの奴が、私を殺す奴になった。




死ぬのなら、私はあなたに殺される。




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