あなたのために。-光と影-
蓮条 楓(れんじょう かえで)
これが奴の名前。
関東一の日本屈指の極道一家、
蓮条組の若頭。
高校生のときは暴走族の総長だのやってたらしいが、高校卒業と同時に抜けて今は蓮条家系列の会社の社長。
そして更には蓮条組の次期組長となる男。
要は坊ちゃんってこと。
私は別に奴に何かされたということはない。
私の真の復讐相手は蓮条楓の実父で現蓮条組組長・蓮条穣之介(れんじょう じょうのすけ)。
あいつが私の家族を破滅と崩壊へと導いた悪党。
あいつに家族がいなくなるとどう思うかどう感じるか知らしめるために、まず蓮条楓に復讐する。
蓮条組はここの店の常連客だけど、蓮条楓は女嫌いだから滅多にこの店に来ない。
だいたい来るのは蓮条穣之介の代わりとして。
今日来た理由は知らないけど、奴に復讐するチャンスは今日しかない。
必ず成功させないと。
「…っ!」
奴と目が合った。
女と目を合わせることのない奴のする行動じゃない。
そして更に驚いたのは、一瞬口角が上がったこと。
今、私を見て笑った?
有り得ない。
私には奴との接点は一切ないし、奴はこういうケバケバしたキャバ嬢が嫌いな筈。
そんな奴が私を見て笑う筈がない。
ただ驚いている私の目の前に、突然ひょこっと顔が現れた。