あなたのために。-光と影-
それから完全に二人の世界に入ってしまったため、陽と共に退室する。
煙草嫌いの小夜さんのために楓が敷地内禁煙命令を出し、敷地内のあちこちには喫煙所がある。
スモークガラスになっているその喫煙所で私と陽は無言で煙草を吸う。
小夜さんは本当に一般人なんだよな?
まるで極道で生きてきたように、要らない人間には心を鬼にした。
それは一般人とは思えないほどに冷たい。
楓が彼女をあれほどまでに溺愛するのが、分かったかもしれない。
彼女は我々のような裏の奴らにはさぞモテることだろう。
「…陽、お前は小夜さんを見てどう思った?」
無心に煙草を吸う陽を見る。
私が考え事をしてる間に、陽は煙草を10本近く吸っていた。
陽は灰皿をジッと見つめ、小さくなった煙草をそこに押し潰した。
「…最初はただの顔がいいだけの女だと思ってたけどさ〜。
あの有無を言わさないような強い冷酷な目?
ちょー気に入った。
ちょっとやそっとの苦しみじゃあの目にはなれないよ。
楓が4年前から欲しがるのも頷ける。
今度俺の妹に紹介しよっと♪」
呑気に鼻歌を歌いながら陽は喫煙所を出て行った。
女に全く興味のない陽でさえも気に入ってる。
確かにあの目は強くもあり、冷酷さも感じた。
親が離婚してそこから一人で生きてきた、なんて過去がある奴の目じゃなかった。
死や痛み、苦しみに絶望。
辛いこと全てを経験しなければ、あんな目はそう出来ない。
彼女には一体何があったんだ。
そう考えながら、自分も陽のようにあいつに小夜さんを紹介しようと決めた。
【side end】