あなたのために。-光と影-
「今すぐ取り消して」
「嫌だ」
「取り消して」
「ダメだ」
「取り消せ」
「あ゛ぁ?」
「はい、ごめんなさい」
こんなやりとりが数十分続いている。
いつの間にか白兎と陽もいなくなってるし……
私は今、蓮条楓に白兎達に言った"正妻"を取り消せと要求しているところ。
もちろん奴は承諾してくれるわけがなくて。
それでさっきからこの調子。
「お前は俺の傍にいることにした。
正妻と言って何が悪い」
その考えが悪い。
私は正妻になるために傍にいることを決めたんじゃない。
「私が空っぽになって何もかも失ったら、私を殺してくれるから傍にいるだけ。
あなたの正妻になるつもりはない」
しかもそろそろ私を離して欲しい。
さっきから抱き締められたままで、苦しいし気持ち悪い。
奴が考え事をしてる隙に奴の腕を退けようとしても、奴の力は怯まなかった。
「正妻と名乗るくらいどうってことないだろ。
名乗ってるうちに本当に俺の女になるだろうし」
何あり得ないこと言ってるんだ、このお坊ちゃんは。