あなたのために。-光と影-
「君がNo.1の黒百合ちゃん?うわーっ超美人!大人っぽいし、隣の奴等より全然格違うよー」
赤髪の私と同い年ぐらいの男の子はサラッと毒を吐いた。
真姫と梓の顔が鋭くなったのが視界に入った。
私がずっと言いたかったことをさらっと言ってくれたこの男の子には感謝しかない。
男の子の襟を誰かが摘まんだ。
そして私から引き離す。
赤髪の男の子の背後にいたのはメガネをかけた銀髪の男性。
「こら、陽(よう)。彼女がドン引きしてますよ」
銀髪男性に言われ、陽と呼ばれる男の子は渋々私から離れた。
銀髪メガネ(←勝手に命名)は私の方を見てニコリと微笑んだ。
「いきなり陽が失礼しました。私は楓の右腕の片桐 白兎(かたぎり はくと)と申します。本日はよろしくお願いします」
白兎と名乗る銀髪メガネは微笑んだまま胸に手を当てた。
スーツを黒から白に変えれば、完全に執事になれる。
それほど恭しい、極道坊ちゃんの右腕とは思えないほど。
銀髪メガネの眩しさに負けないように私も笑顔を作る。
「いえ、お褒めいただき恐縮です。当店のVIPルームへとご案内させていただきます。こちらへどうぞ」
褒めてもらったことへまず軽くお辞儀をして、手で促し先頭を歩く。
常連客の部屋への案内はママがやる仕事だが、ママは今日は別件でいない。
そのため次に地位が高いNo.1の私が案内する。
それもあるけど、本当は他のホステスとは違うとこを"格"を見せつけるため。
その成果が出たのか、真姫と梓は先程よりも表情が鋭くなってる。
「黒百合ちゃんが案内してくれるんだ!やっぱ普通の子とは全然違うなー、ね!楓?」
陽くんが私を褒める声は聞こえたけど、先頭を歩いてる私には奴が笑った顔には気付かなかった。