あなたのために。-光と影-
奴が白兎をサンドバッグにしている間に準備を終わらせ、部屋の玄関に向かう。
ドアを開けるとスキンヘッドにグラサンをかけた厳ついスーツ姿の男性が立っていた。
スキンヘッドの男性は私の姿を確認すると、丁寧に頭を下げた。
「本日お嬢を送らせていただきます。風間と申します」
「あ、えっとよろしくお願いします」
意外と礼儀がいいことに驚いてしまった。
蓮条組の風間…どこかで聞いたことがある。
確か蓮条組の重鎮的存在じゃなかった?
そんな人が私の送迎をしてくれるなんて。
私を逃がさないようにしてるのだろうか。
わざわざここまで用心深くしなくてもいいのに。
どうせ、
「どうせもう私が住んでたアパートも契約取り消したんでしょ?
だったら私の帰る場所はここしかないから安心して」
背後にいた奴を睨めば、ご名答と言わんばかりに奴はニヤリと笑った。
その表情が何故かかっこよく見えてしまった。
え、なんで?
こんな奴、好きでもなんでもないのに。
悔しくて奴から顔を逸らした。
「…じゃ、」
「…小夜」
奴の方は向かずに行こうとしたが、奴に手首を掴まれ後ろに引き寄せられた。
私の体は自然と向きを変えて奴の方へと振り向く形になった。