あなたのために。-光と影-




顔を赤くしながら早足で歩き出した小夜を、風間が慌てて追いかけている。




そんな光景を見て笑っている楓を白兎は楓にサンドバッグにされた痛みを堪えながらも見つめた。




「…小夜さんに言わなくてよかったんですか?
これから会う人のことを」




白兎の言葉に、楓は一頻りに笑うといつものように鋭い目つきで小夜の見えなくなった廊下を見た。




「言えば小夜は絶対止めてくる」




これも小夜を俺のものにするためだ。




楓の強引さに白兎はため息しか出ない。




(小夜さんはきっと紅蓮の見舞いに行ったら、ついでに彼女のところにも行くはず。
楓が行ったことがバレるのも時間の問題なのに)




白兎は楓を見ると、先程のことを思い出しているのか肩を揺らして笑っている。




小夜への異様な溺愛ぶりと、バレることすらも楽しんでいる上司に白兎は本日二度目のため息をついた。




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