あなたのために。-光と影-
周りの好奇な視線をくぐり抜けながらも裏門に足を運ぶ。
裏門に行けば見たことのある真っ赤なバイクが停められていた。
タバコ吸ったり族の総長やったりと不良なくせに、学校は真面目に登校してる。
ジャリ…
背後から聞き覚えのある足音が聞こえた。
あなた前に言ってたよね。
学校に真面目に登校するのは…
「…『学校に行かないあんたの分まで通ってやってんの』って。
ほんと上から目線だよね、環は」
足音のする方へと振り向けば、そこにいたのはずっと会いたくてずっと謝りたかった人。
久しぶりに見た赤髪が綺麗に風になびく。
幽霊でも見たように目を丸くして私を見るその姿は、数年ぶりに再会したように懐かしく見えて。
それが面白くてつい笑ってしまう。
「…顔見せるの遅くなってごめんね。ただ…」
"ただいま、環"
この言葉は環の腕に包まれたことで吸収されてしまった。
「ほんっとにあんたは…どんだけ心配したと思ってんの…!」
環の肩が震えている。
めったに涙を見せない環が私のために泣いてくれているのは素直に嬉しい。
そんなこと直接本人には言わないけど。
言ったら絶対調子に乗るから。
だから私は代わりに環の背中を優しく撫でる。
「…ありがとう」
そしてめったに言わない感謝の言葉を添える。