あなたのために。-光と影-
見えない鎖
風間さんが運転する車に乗り、その車の後ろからは環が真っ赤なバイクでついてくる。
黒光りの高級車の後ろを真っ赤なバイクがついてくる、一目見ただけで危ない奴等だと思われるだろう。
日向のところに向かう前に篠と弥生の様子を見に行った。
篠と弥生はまだ負傷部分に包帯が巻かれていたけど本人達は元気で、自分達のことより私の無事を泣いて喜んでくれた。
二人とも致命傷にならなくてよかった。
二人の号泣する様を思い出して一人笑っていると、車はいつの間にか目的地である総合病院に到着していた。
風間さんが車のドアを開けてくれ、ゆっくりと車から降りる。
この病院を見上げるのはいつぶりだろう。
もう一年以上見ていない気がする。
風間さんは車を駐車場に停めるため、また車に乗って行ってしまった。
「…家族に会うってのに緊張してんの?」
代わりにバイクを駐輪場に停めた環がやってきた。
環の視線の先には小刻みに震えた私の手があった。
こういうちょっとした変化にすぐ気付くから、環は嫌だ。
さっきまで久しぶりの再会に泣いてたくせに。
「…行くよ」
環が言ったことを無視して、私は早足で病院の出入り口へ向かった。