あなたのために。-光と影-
風間さんの車に乗ってる余裕もなく、環のバイクで奴のいる場所へ向かう。
奴のいる場所へと近付く度に怒りが増していく。
奴への怒りのせいで、環のお腹に回した腕に力が入ったことに気付かなかった。
蓮条組の本拠地に着くと早足で歩きながら被っていたヘルメットを外す。
背後から環が呼ぶ声が聞こえる。
でもそんなことに振り返ってる時間なんてない。
次々と声をかけてくる組員たちを無視して、さっきまでいた部屋のドアを思いっきり開ける。
そこには奴が黒いソファーに座り、パソコンと睨めっこをしていた。
奴の座る反対側のソファーには白兎が何かの資料に目を通していて、白兎の隣には暇そうに寝そべっている陽がいた。
勢いよく開いたドアに驚きもせず奴はこちらを向いた。
私を鋭い双瞳で捉えると、奴の表情がわずかに和らいだ。
「…小夜、お帰りのキ……」
「日向に何するつもり!?」
奴の言葉を遮って奴の脚の間に乗り上げ、私は奴の胸ぐらを掴んだ。
私の行動によって奴の和らいだ表情が一転し、いつもの無情な鋭いものに変わった。
奴は私が力強く掴んでいる胸ぐらを一瞥して、また私を見上げた。