あなたのために。-光と影-
気付けば視界に入った机の上の灰皿を持ち上げていた。
灰皿にはタバコの吸い殻が入っていたけど、そんなの気にすることもなく振り上げた。
私の大切な光と居場所をなくされたら、私には何もなくなる。
ならなくなる前に奴を殺して、復讐だけでも成し遂げて私も死んでやる。
一度だけ殴ったって死ぬわけない。
だったら何度も何度も殴って確実に殺してやる。
灰皿を思いっきり奴の頭めがけて降り下ろした。
「…いけませんね。それはいくら楓の妻でも許しませんよ」
「…っ!…い、あっ……!」
灰皿が奴の頭へ直撃する寸前のところで手首を強く掴まれてしまった。
右半分にタバコの吸い殻が降りかかる。
そんなことよりも力強く掴まれた手首が痛くて、言葉がでない。
伸びてきた腕をたどってみると、私の手首を掴んでいるのは白兎だった。
さっきまで私の背後にいたのに、いつの間にか私の隣に来ていた。
「このまま楓を殺すのなら、私はあなたを殺しますよ」
「…はな、して……!離せ…!」
白兎の言葉に耳を貸さずに、私は白兎の力に抗うように再び灰皿を降り下ろそうと持ち上げた。