あなたのために。-光と影-
「ちょっとこれ手首折れてんじゃない!
…はぁ、これは白兎(あいつ)の今日の飯抜きね」
小夜の腫れた手首を見て、華代はため息をついて小夜に適切な処置をしていく。
小夜はたまに痛みによって表情を歪める時があっても、起きることはなかった。
「…はい、出来たよ。また見に来るから、その時までは折れた手首は絶対安静ね」
小夜の腫れた手首はギプスや包帯でしっかりと固定されている。
もう痛みをあまり感じないのか、小夜の表情も穏やかになった。
華代がゴミや出した器具を仕舞ってる横で、ベッドに腰掛け小夜の頬に伝う涙の跡に触れる。
「…珍し。あんたが女性にそんな優しい目をするなんて。
そんなにその子が大切なら、傷つけないで守ってあげなよ」
小夜が一番大切で、誰よりも守ってやりたい。
でも俺はあんな風に大切なものを傷つけて守ろうとする方法しか知らない。
そんな世界で生きてきた。
「どうしたらこいつを傷つけずに守ってやれる……?」
どうしたらお前は俺の隣で笑う?
「…とりあえず、罰としてすぐに暴力に走るという考えを捨てることね。
あんたは大切なものを傷つけても守るって考えしかないのよ。
傷つけずに守る方法、それはこの子がよく知ってるんじゃない?」
小夜は双子の妹をずっと傷つけずに守ってきた。
二度とあの深い傷を負わせないように。
こいつが持っている、俺の知りたい答えを。
小夜。
お前を守らせてくれ。
お前が隣にいない世界は考えられねぇ。
小夜がよく休めるように、小夜の唇に唇を重ねた。
【side end】