あなたのために。-光と影-
6話 意味
中学一年生の時だった、私の人生が狂い始めたのは。
「日向、今日の理科の問題できた?
あれさっぱり分からなかったんだけど」
「出来たよ。
小夜ちゃん復習予習していかないから分からないんだよ。
今日は一緒に勉強しようね?」
「えー、家帰ってまで勉強したくない」
まだシワのついてない新しい制服に身を包み、手を繋いで家に帰る。
背丈もほとんど一緒の私と日向の背中を夕日が照らす。
「ただいまー」
「お母さん、ただいま」
いつもならお母さんが顔を出して笑顔で答えてくれるのに、今日は何故か家が静かだった。
「お母さん夕飯作ってて聞こえないのかな?
日向、私キッチン見てくるから部屋に鞄置いてきて」
「小夜ちゃん可愛い妹をコキ使わないでよ。
ちゃんと手洗ってお母さんの手伝いするんだよ?」
「分かってるよ。私そんな子供じゃないんだから」
姉である私のことを子供扱いする日向に文句を言って、キッチンに向かえばそこにお母さんはいなかった。
「…あれ、夕飯の用意すらしてない」
この時間になればお母さんは夕飯の仕度をしているはずなのに。
「…きゃああぁぁぁぁぁぁぁ……!!」
どうしたんだろうと思った瞬間に聞こえてきたのは日向の悲鳴だった。
「日向!?どうした、の……」
「さ、小夜ちゃん…お母さんと、お父さんが…っ」
日向の悲鳴が聞こえた部屋は両親の寝室で、そこでお父さんとお母さんは二人で首を吊って死んでいた。
守ると誓った日向に二度と消えることのない深い傷を負わせたのも、中学一年生の時だった。