あなたのために。-光と影-
"何してんの、退いて"
以前の私ならこの左手に絡まった手をほどいて、ソファーから立ち上がっていた。
でもそうせずに奴にされるがままでいるのは、きっと奴に侵されている証拠。
華代さんは向かいのソファーに移動しながらこの光景を天地がひっくり返ったかのような驚いた顔で見ている。
抵抗しない自分にも驚くけど、華代さんの表情にも驚く。
どんだけ珍しいんだ、この光景。
「失礼します」
風間さんが部屋に白兎のご飯を持って入ってきた。
いい匂いに誘われるように白兎はテーブルに移動して、死に物狂いでご飯を食べ始めた。
「ちょっとバカ白兎!楓と小夜ちゃんの前で断りもなしに食べないの……って聞いてないし」
「気にしないでください。
私は大丈夫ですから、そのまま食べさせてやってください」
こんな私と華代さんのやりとりも聞かずに白兎は食べ続けてる。