あなたのために。-光と影-
対面
"お前と話したいと言ってる奴がいる"
そう言われたのが三日前。
ギプスした手を気を付けながら用意された黒いドレスを身につける。
背後にいた楓が自然な手つきで背中をチャックをあげてくれる。
膝の上に置かれた左手を見る。
左手は小刻みに震えている。
「…この震えは復讐できることの喜びか?
それとも復讐することの恐怖か?」
震える左手を掴まれて持ち上げられ、そのまま楓の唇へと触れる。
この手の震えはどちらかかもしれないし、どちらでもないかもしれない。
自分の体が思ってることが理解できないなんて情けない。
奴はひとしきり私の手に口づけをするとその手を優しく引いて立ち上がらせる。
反射的に奴と向かい合わせになると、奴は内ポケットから何かを取り出してドレスと右手を固定してる三角巾との間から僅かに覗く谷間にそれを入れた。
それを見た瞬間に体が石になったかのように固まった。