あなたのために。-光と影-




手を伸ばしかけて止める。
手が震えていることをバレたくなかった。




でも奴にそんなこと関係ない。




楓は伸ばしかけた私の手を強引に掴んで私の車から下ろした。




私を車から下ろすと自分の方へと引き寄せてしっかりと腰に手を回してきた。




そして奴は何も言わずに進み始めた。




「まぁ、蓮条の若頭様。ようこそお越しくださいました。
若奥様もお話聞いております」




確かに楓の妻になるとは言ったけど、まだ若奥様になったつもりないけど。




そう思いながら奴を見上げると満更でもなさそうに笑う奴がいた。




最悪な気分だ。




女将と呼ばれる中年女性に軽く挨拶をして、その女将の後について長い廊下を歩く。




奥へと案内されていくと他の客が少なくなり、段々黒いスーツを身にまとったボディーガードらしき人物が増えていった。




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