あなたのために。-光と影-




俯いていた顔を上げてまず目に入ったのは、綺麗な蝶の着物を身に纏った女性。




この店の女将みたいに黒髪を綺麗に結わえてあり、その女性は私と目が合うと微笑んだ。




恐らくこの人は蓮条恵美(レンジョウエミ)。
蓮条組組長の妻であり、楓の母親。




澄んでいてそれでもどこか鋭い瞳は楓に似てる気がする。




この人が楓の母親だとすると隣にいるのは…




白髪混じりの黒髪のオールバック。
黒の着物に袴を身に纏うその姿は何度も遠くから見ていた時と変わらない。




近くで見て唯一違うのは突き刺すような雰囲気に飲まれそうになること。




「…まぁ、座れや」




蓮条穣之介(レンジョウジョウノスケ)。
蓮条組39代目組長であり、私の家族をバラバラにした張本人。




私が体を汚してまでずっと殺してやりたいと思っていた奴。




そいつが今、私の手が届く目の前にいる。




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