あなたのために。-光と影-
蓮条穣之介から目が離せずにいると、奴に手を引かれて隣へと座らされた。
蓮条穣之介と蓮条恵美と向かい合うようにして奴の隣に座ると、蓮条穣之介は視線を私の方へと向けた。
狙いを定めた鷹のような鋭い目に思わず下を向いてしまった。
まるで私がなんのためにここまで来たのか全て分かっているような目つきだったから。
「…君が若月小夜さんだね?」
「っ!……は、はい」
重い沈黙を破ったのは他でもない蓮条穣之介だった。
名前を呼ばれてゆっくりと顔を上げるとそこには関東随一の極道一家組長の表情ではなく、どことなく優しい父親のような表情をした蓮条穣之介がいた。
あまりの違う様に返事をするのが遅れてしまった。
「話は楓や風間から聞いてる。
儂は蓮条組組長の蓮条穣之介だ。
そこの阿呆の父親でもあるが、君のお父さんの古い友人でもある」
「…え、…?私の……父の…?」
「そうだ。
その繋がりで儂の隣にいる妻の恵美と君のお母さんも仲が良かったんだ」
私のお父さんの友人?
蓮条穣之介から出た言葉が信じられなかった。
私のお父さんを自殺に導いた人がお父さんの友人だなんて誰が信じられるだろうか。
どうして友人なのにお父さんを苦しめたんだ。