あなたのために。-光と影-
「…なぜマティーニに毒を盛らなかった?」
「っ!?」
ド直球の質問に寝たフリをすることすら忘れて勢いよく起き上がる。
ベッドの上に座る奴と必然的に目が合う。
「じじいがお前の父親を助けようとしていた事実を知って殺す理由がなくなったからか?」
やめて。
あの時のことを思い起こすのは。
「それとも人を殺すことに今さら怖じ気づいたか?」
「…やめて」
「俺を殺そうとした時も躊躇っていたな。
本当は殺すつもりなんてなかったんじゃねぇか」
やめてって……言ってるでしょ
「人を殺せない奴がよく人を殺そうと毒を手に入れたな。
その毒はただのお飾りか?」
黙って。
「そんなんだから大切な家族も崩壊したんじゃ……」
「うるさい!」
近くにあった枕を奴の顔面めがけて思いっきり投げる。
奴は避けようとせず、もろに枕をくらった。