あなたのために。-光と影-




…生きる目標がない?




それは生きていく意味がないことと同じ。




"大切なものも何もかもなくなったら、今度こそ俺が殺してやる。"




奴にこう言われて私は奴の傍にいることにした。
全ては奴に殺されるために。




「…じゃあ、殺して」


「………」


「私には何もなくなった。
そしたら私を殺してくれるんでしょ?そういう約束だったはずよ。

生きる意味だった復讐もなくなった。
私には何もなくなったのよ。だから殺し……」




殺してよ。




この言葉は奴の唇に吸い込まれて言えなかった。




頭と背中が凍りついたかのように奴に押さえられて体が動かない。




唇が妖艶な水音をたてて離れると、すぐに奴の目に捉えられる。




「…お前は何もなくなっていない。
小夜、お前には俺がいる。

何もなくなる時、それは俺が死ぬ時だ。
俺が死ぬ前に俺がお前を殺す」



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