あなたのために。-光と影-
そんなことを考えていれば目的地に辿り着く。
外見は落ち着いた黒、そして落ち着いた白を基調とした店内。
そんな店の看板には「胡蝶」と書いてある。
和風な名前だけど、この繁華街一とも言える立派なクラブ。
ここは私が働いている場所であり、私が唯一羽を伸ばすことのできる場所。
入り口の階段を降りてドアを開ける。
フロアのスタッフはせかせかと開店準備をしている。
話しかけたくないし、話しかけられたくもない私は何も言わずに早足で通り過ぎた。
更衣室へと入ると新人のホステス達は既に準備を終えていた。
そして私を見るなりあからさまに肩を震わせた。
「「「…お、お疲れ様です」」」
新人ホステス達は軽く頭を下げる。
別に殺気を放ってる訳じゃないんだから、そんなに怯えなくてもいいのにと思うけど口にはしない。
「…お疲れ様」
独り言に近い声量で言って奥の更衣室に向かう。
何故だかは知らないけど、新人の子やNo.が私より下の子は私を怖がる。