あなたのために。-光と影-



強い口調で怒ったり、こき使ったり嫌がらせしたりとか相手の嫌がることはしたことないのに。



黒のヒラヒラした露出の多いドレスに着替える。



「そりゃあれだよ、あんたあんま喋んないしその鋭い目つきでしょ?誰だって怖がるわよ」



フロアスタッフで私の唯一の理解者・環(たまき)が煙草の煙を口から吐いた。



環は口に出してないのに、私の考えていることが分かって正直気持ち悪い。



私が煙草嫌いなの知ってるくせに態と私の前で煙草を吸う。



でも私には環の考えていることは分からない。



「…もうミーティング始まってるよ、行かなくていいの?」



早くどっかに行って欲しい、そう思って考えた一言。



そんな私の考えも環はお見通し。



「あんただってミーティング行かなきゃでしょうが。あたしはああいうのめんどいから行かないだけ」



私と全く同じ理由。



ミーティング聞いたって、どうせ新人の紹介やら今日の目標金額やらどうでもいいことしか話さないんだから聞くだけ無駄。



だからいつも出勤時間ギリギリに来て、ミーティングが終わる頃に準備を終えるようにしてる。



それなのにどうして怒られないかって?



私を怒れる人は誰もいないから。
ただそれだけ。



唯一私を怒れるのはこの店では一人だけ。


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