あなたのために。-光と影-
黙って早足に帰ろうとした私に、
何故お金が必要か?
そんなことを聞いて何になるの?
この状況で聞くなら、
何故黙って帰ろうとする?
ヤることヤってヤり逃げか?が普通でしょ。
お金は私にとってはなくてはならない必要なものだけど、その理由を奴に言う理由がない。
第一、お金が必要なのは私だけじゃないと思う。
何だか奴の言い方は、私だけがお金を必要以上に欲しがっているとでも言っているよう。
確かにそうかもしれない。
でも、
「…あなたには関係ない」
私にお金が必要な理由はちゃんとある。
でも奴には関係ない、それは確かだ。
私は目つきを鋭くしたまま奴を睨んだ。
奴も私を見つめたまま、何かを考えているようだった。
奴も環のように私の考えていることが分かるから、私をジッとみて考えを読んでいるのか。
すると奴は何かを閃いたのか、ニヤリと笑った。
そして奴はその口からは言う筈のない言葉を口にする。