あなたのために。-光と影-
訳分からず立ち尽くしていると、奴は私の手首を掴み、洗面所へ連れて行かれた。
そして鏡の前に立たされる。
「…これを見てもまだ帰る気か?」
鏡の前の自分の身体を見て驚いた。
着替えてる時は部屋が暗くて分からなかったけど、首筋に満遍なく散りばめられた赤い跡。
奴がいるのにも関わらず、私はワイシャツのボタンを外して胸元を見る。
奴は私の胸元を見てまたヤりかねない顔をしていたが、それどころではなかった。
胸元からお腹へと赤い跡が花びらのように散りばめられていた。
ウソ…何でこんなに跡が…
奴はこんなにもいつ付けたのか、全く分からなかった。
チクリとした痛みはよくあったけど、まさかこんなにとは思わなかった。
「…だから言っただろ、それを見せつけて帰るのかと。俺はお前を離す気はないし、帰す気もない。お前が逃げようとすればその跡は増えていく。逃げずに俺の傍にいればお前が必要な分の金はくれてやる」
背後から奴が私を鏡越しに見つめる。
奴の企みに吐き気がする。