あなたのために。-光と影-




要は奴から私は逃げられないってことでしょ?




お金を貰ったって、籠の鳥じゃ意味がない。




これは軟禁以外に何の言葉が当てはまる?




何故私をそんなに引き止めるの?
私に何を望んでいるの?




聞きたくても聞けずに、奴に手を引かれ私は居間の食卓に戻った。




奴の向かいのイスに座らされ、冷めてしまった朝食を口にする。




白兎さんが作ったのか分からないけど、とても美味しい。
こんなに栄養のある朝食は小学生以来か何て考えてると、奴の声が聞こえた。




「…お前、本名は何て言う?」




先に朝食を食べ終えた奴は、朝食を食べる私をジッと見ている。




本名?源氏名ではなく本当の名前?




そんなこと分かってはいるけど、私の本名を知っているのはママと環とあの子、そして忌々しいあいつだけ。




私を一番最初に汚したあいつ。
二度と会いたくない顔が脳裏に現れる。




「…百合」




当然奴に本名を教えたくなくて嘘の名前を言う。
咄嗟に今思いついた、黒百合の黒をとっただけの名前。




それを知らない奴は嘘の本名を知って何故か微笑んで「百合…か」と名前を言った。




何がそんなに嬉しいの?
私の言ったこと簡単に信じて、それでも極道の人間?



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