あなたのために。-光と影-
私の腰に回った左手で、私の左手を掴んだ。
そして自分の右手を私の左手に合わせた。
奴は私の左手と自分の右手で手比べをした。
何をしてるの、この人。
手比べとかあなたのすることじゃないでしょ?
あなたはその手でたくさんの人を傷つける人でしょ?
それなのに、
「…ほんとだ、ちいせぇ手だな」
何故そう言って、愛おしそうに私の手を見て解すかのように揉んでは私の手に指を絡めるの?
どうしてそんな優しい顔で私を見るの?
あなたは極道の坊っちゃんで、私はあなたを殺そうとした復讐者なのよ?
あなたをまた殺すかもしれないんだよ?
それなのにどうして…?
どうして…どうして…
あれ?
何だか眠気が急に襲ってきた。
睡眠はいつも2、3時間だから今日も大して変わらないのに。
奴の気持ち悪いけど、温かい体温に触れたから?
瞼が重い。
ダメだ…寝てしまう…
まだ分からないこと…がある…の…に…
私は重い瞼を上げられず、静かに目を閉じた。