あなたのために。-光と影-
【side 楓】
百合の左手の指を一本一本揉んでいると、百合は俺に寄りかかり目を閉じた。
…寝たか。
百合が寝て1、2分後に白兎が部屋に入ってきた。
「…そろそろ薬が効いてくる頃だと思いまして。気持ち良さそうに寝てますね、彼女」
白兎は眼鏡を押し上げて百合の顔を覗き込む。
百合に近寄られたくなくて、眠る百合を抱え上げて立ち上がる。
「…ベッドに寝かしてくる」
俺の行動に白兎の、「嫉妬深いですね」と小声で言った声は俺には聞こえなかった。
百合を寝室へ運び黒いベッドに優しく寝かせる。
今まであまり寝てこなかったのか、薬がかなり効いている。
黒い掛け布団をかけてやりベッドに腰かけ、しばらくじっと百合を見つめる。
艶のあるサラサラした腰までの黒髪、長い睫毛にスッキリとした小鼻、そして潤った薄い唇。
これが俺の欲しかったもの。
俺が4年前から手に入れようと待っていた女。
そいつが今、俺の目の前で眠っている。