あなたのために。-光と影-
ビクッと身体が反応して、歩く足が止まる。
もう見つかってしまった。
判断するのが遅くなったせいか。
恐る恐る後ろを振り返る。
そこにはニコッと眼鏡の奥で笑ってる、白兎さんがいた。
「こんばんは、黒百合さん。一日振りですね?」
この人の笑顔がやたら怖く感じる。
でも怯んだら負けだ。
私は白兎さんに向き合った。
「こんばんは。今朝は美味しい朝食をありがとうございました」
白兎さんの圧に負けないようにと視線を鋭くして、白兎さんを見つめる。
それを気にしていない白兎さんは笑って「お粗末さまでした」と言っている。
そして白兎さんは眼鏡を中指で押し上げた。
「ところで黒百合さん、どこかへ行かれるのですか?」
やはりこの質問がきた。
奴の右腕なら私を軟禁していることなんて知っているはずだ。
知っていて敢えて私に聞く。
私に自覚させるためか、強調させるためか。