あなたのために。-光と影-
「誰にも口外しませんよ、もちろん楓にも。
私、口は重い方ですから。
そうですね、もし楓にバレたら私の監督ミスとしておけば楓はチッと舌打ちで終わらせるでしょう。まぁ楓はまたあなたを探し出すでしょうけど」
白兎さんの言葉から奴は白兎さんをかなり信頼しているのだと分かる。
そんな信頼された人が私を逃がす?
有り得るだろうか…
でも今はその言葉に縋るしかない。
「…ほんとに私をここから逃がしてくれるんですか?」
ゆっくり後ろに後ずさりながら尋ねる。
白兎さんの言葉を上辺だけ信じていても、白兎さんには近寄りがたい。
もしかしたら感情を露にする奴よりも、感情を決して表に出さずにただ笑うだけの白兎さんの方が怖い存在かもしれない。
実際今も眼鏡の奥の目が笑ったままで怖い。
私が一歩後ろに下がれば白兎さんも一歩私に近づいていたが、ふとその白兎さんが足を止めた。
そして眼鏡を中指で押し上げた。
「…もちろんです。でも…」
白兎さんの口角が上がり、白い歯が見えた。