あなたのために。-光と影-
声が上手くでなくて小さくコクリと頷いた。
それでも満足したのか、奴がふっと笑う声が耳元で聞こえた。
もしかして私が暴れて起きるまでこうして抱き締めていたの?
何で?
何でそんなに私に優しくするの?
奴にとって私はただの性欲処理の女でしょ?
なのに何でそんなに愛おしそうな目で私を見るの?
愛おしそうに私の黒髪を優しく梳くの?
奴のことは好きになれないのに、どうしてこの手が温かいと思ってしまうのだろう。
奴は私の復讐すべき相手なのに。
この手を振り払えない。
このうちに私に赤い跡を増やせばいいのに。
私はここから逃げようとしたんだから。
そんな奴の言葉からは私を労る言葉ばかり。
そんな風に優しくされたら、私の復讐心も何処かにいっちゃうじゃない。